生きているその精神  


 もともとメイト・シップは、奥地を開拓した牧畜業者や農民たちの間に生まれたものだ。だから、人口の四分の三が都会に住み、ホワイト・カラ−層が増えた現在では、一部の人々を除いてその言葉自体「現実味を失い、もはや伝説に過ぎなくなった」と言う人もいる。
 しかし、私の体験したところでは、たとえ姿や形が変わっても、メイト・シップは依然として現代のオ−ストラリアに生き続けている。
「イギリスなら、引っ越しして隣人とまったく口を聞かなくても、あるいは隣人が何者なのかを知らなくても住み着くことができますが、オ−ストラリアではそうはいきませんでした。たちまち、隣人から歓迎のあいさつを受け、ごく自然に交際も進みました。隣人のお話では、それが押しつけがましいものになってはいけないと注意を払われたそうです」。
 イギリスから移住してきたという若い父親は、子どもを公園の芝生で遊ばせながら、私にこう話してくれた。その奥さんも、
「この国の人ほど、お喋り好きな国民はいませんね。エレベ−タ−の中でも、見知らぬ者同士なのに、お天気のことやその日の出来事を話し合うんですもの・・・」。