「メイト・シップ」のさらに続き

 オ−ストラリアの開拓時代、臨時の仕事や季節労働をしながら牧場を渡り歩く人々がいた。身の回りの品を丸くて細長い「スワッグ」に包んで肩に担いでいたので、「スワッグ・マン」と呼ばれていた。ひげ面でつぎはぎだらけのヨレヨレの服を着て、手に下げるブリキ製の湯沸かし以外は、すべてスワッグに包み込んでいた。
 彼らのカウボ−イ・ハットのつばには、コルクがぶら下がっていたり網が張ってあったりした。これは、この国名物の「ハエ」を追い払うためのものだ。(この国には家畜が多いので、ハエがたくさんいる。だから、「オ−ストラリアン・サル−ト」という独特のあいさつの仕方?がある。目の前のハエを払うために、手のひらを左右に振る「しぐさ」のことだ。初めのうちは、これを「あいさつ」と勘違いする人もいる)。
 スワッグ・マンは、ふつう一人か二人で旅をし、中には犬を連れている者もいた。そして、行く先々で仕事を手伝っては、食べ物をふるまってもらった。人手の少ないオ−ストラリアの奥地(アウトバック)の牧場などでは貴重な労働力となり、また、彼らの話は都会から遠く離れた地に住む人々には新鮮に聞こえたに違いない。
 オ−ストラリアの開拓史を語るとき、欠かすことのできない存在であるスワッグ・マン。彼らを喜んで受け入れる「メイト・シップ」がなかったら、スワッグ・マンが開拓史に登場することもなかったであろう。