「ジョ−ク」の続き  

「『それはすばらしい鉄砲じゃないか!』アルバ−トさんはこう叫んだ」。
 1971年5月28日、 メルボルンの新聞「ジ・エイジ」は、こういう見出しで、アルバ−トさんの写真入りの記事を載せた。
 「昨日の午後、メルボルン大学売店で強盗を働こうとした二人の若者にとって、アルバ−ト・ラドモ−ルさん(63歳)は余りにも手ごわい相手であることが証明された。
 二人の強盗が、ライフル銃を振り回しながら学生寮売店に押し入り、このうちの一人が『オレたちは強盗だ』と、低い声でアルバ−トさんを脅した。
『バカ言え!』アルバ−トさんは答えた。
『こっちへ来い!オレたちは強盗だ』
 若者はこう繰り返した。アルバ−トさんは、また口を開いた。
『君の持っているそのライフル、実にすばらしいじゃない?』
 このひと言が、“間抜けな強盗たち”にはこたえた。ちょうど寮の管理人がその場にやってきたこともあって、二人の強盗は何も取らずに逃げてしまった。あとで、アルバ−トさんはこう話した。
『私は、初め彼らが強盗の真似をして、私をからかっているものと思っていた』
 アルバ−トさんは、7年前から学生寮売店で働いているのだが、彼は強盗に対して“慰めのひと言”を述べている。
『実は、あのとき売店の金庫の中には大金などなく、50ドル(2万円)も入っていなかったんだ・・・』」。