「サ−ビス精神」の続き

 首都キャンベラに旅行しようと、旅行代理店を訪ねた。応対した係員は、飛行機の出発時刻を調べながら、「キャンベラは夜景がすばらしいので、日が暮れてから到着する便に乗った方がいいですよ」と、アドバイスしてくれた。
 人工都市・キャンベラ。ワシントンに似せて1913年、アメリカの建築家ウォルタ−・バ−リィ・グリフィンが設計し、長年かかって完成した人工都市だが、幾何学模様を形成する昼間のキャンベラには、およそ“人工都市”のイメ−ジはない。“森の都“であり、林の中に建物が点在している感じだ。
 世界中の樹木を集めたというこのキャンベラの緑も、夜になるとほとんどが闇に包まれて、「森の都」は“光の都”へと変貌する。主な建物には、ライト・アップが施されるからだ。
 私たちの乗った国営航空機は、暗闇の彼方にキャンベラの灯りが見えると、「存分に、夜景をお楽しみください」とアナウンスして、上空をゆっくりと旋回し始めた。
 そして、眼下に見える建物の一つ一つをていねいに説明してから、着陸態勢に入った。
 念のために書いておくが、この航空機は観光用のチャ−タ−機ではなく、国内線のふつうの定期便であった。