「サ−ビス精神」の続きの続き

 これは、国際線での話だ。シドニ−から香港へ向かう途中、私はいつものように一杯引っかけて眠り込んでしまった。
 気がつくと、隣の席にいるはずの息子がいない。とは言っても、航空機の中。しかも、彼は7歳だし、英語は私よりもはるかに達者だ。「心配することもなかろう」と、私は“夢の続き”を見ることにした。
 30分ほど眠っただろうか。ふと、前方を見ると、息子がスチュワ−デス(当時は、「客室乗務員」とは言わなかった)と一緒に操縦席から出てくるではないか。その上、彼のほっぺたには鮮やかなキス・マ−クが・・・。彼に尋ねると、
「退屈したのでお散歩していたら、あのおネエさんが操縦席へ連れて行ってくれたんだ。そして、パイロットのおじさんが、どうやって飛行機をウンテンするか教えてくれたんだよ。とてもおもしろかった・・・」。
 香港に着いてからが、また大変だった。小柄だが、ものすごく美しい例のスチュワ−ですが私たちの席へやってきて、「また、いつかお会いしましょう。どうぞ、よい旅を!」と言ったかと思うと、我が子のほっぺたに、チュッ、チュッ、チュッ、チュッ。唇の形をした花びらがさらに四つ、彼のほおにみごとに咲いた(このときほど息子がうらやましかったことはない)。