サ−ビスへの気遣い(3)

 ゴ−ルド・コ−ストには、一週間滞在した。朝寝坊の大人と違って、子どもは早起きだ。息子はラジオを聞いたリテレビを見たりしながらも、退屈な時間を持て余していたらしい。
 15階建てのホテルの一室は、オ−ストラリア・サイズの2LDK。子どもが遊ぶには、十分すぎるほどのスペ−スがある。だから、退屈することはあるまいと思っていたのだが、子どもの冒険心は収まらなかった。
 朝起きると、ひとしきりホテルのエレベ−タ−で“上下運動すること”を思いついたようだ。つまり、滞在客相手に「エレベ−タ−・ボ−イ」の役を始めたのだ。
 三日目になると、「僕はお手伝いを頼まれているんだよ」と言って、朝8時になるのを待ちかねて部屋を出て行くようになった。(オ−ストラリアでは、近所に迷惑をかけないよう、子どもたちは午前8時になるまでは、家の中で静かに過ごしていなければならない)。
 やがて彼は、エレベ−タ−・ボ−イからレストランのボ−イに昇格した。エレベ−タ−で遊んでいるうちに、朝食のル−ム・サ−ビスをしているレストランの経営者(ホテルのオ−ナ−でもある)と出会い、早速そちらの方に“仕事”を見つけたのだ。
 オ−ストラリアン・ハズバンドの予備軍として十分教育されている息子は、レストランの経営者に「お手伝いしたい」と申し出たそうだ。一方、経営者の方も、毎朝退屈そうにしている子どもの様子を見ていたので、その場でOKしたという。