サ−ビスへの気遣い(4)

 その夜、ホテル内のレストランに食事に行くと、経営者は息子をつかまえてこう言った。
「おかげさまで、今朝はずいぶん助かったよ。また、明日の朝も手伝ってもらえるかい?」
 こうして、ゴ−ルド・コ−ストに滞在中、息子は日中退屈すると、エレベ−タ−・ボ−イに戻り、朝はル−ム・サ−ビス係として経営者と一緒に朝食を運んだ。と言っても、食事を入れたワゴンを押すぐらいしかできなかったらしいが・・・。
 その一方で、息子の行為はレストランの経営者はともかく、ホテルの滞在客にとっては迷惑ではないかと反省していた。ある滞在客にその旨謝罪したら、逆に
「あなたのお子さんは、いい子だね。チップをあげようとしても、どうしても受け取らないんだ。よろしく言っておいてほしい」などとニコニコ顔で言われると、額面通りに受け取っていいのかとも考えてしまう。
「相手が喜ぶ様子を見るのが、私たちの楽しみでもあるのだ」と言った親友の弁護士の言葉は、こういう場合にも通用するのであろうか。