サ−ビスへの気遣い(6)

 ご婦人方が紳士たちの三倍のアルコ−ルを飲めるには、「理由(わけ)」がある。パ−ティ−の帰りに、車を運転する心配がないからだ。人手不足のこの国では、タクシ−はなかなかつかまらないし、料金もかなり高い。だから、ご亭主が運転して帰宅することになる(いずれにしても、「酔っ払い運転」か?)。ご婦人方がトコトン飲めるのも、運転してくれるご亭主さまのおかげ?それにしても、本当によくお飲みになる。入れ代わり立ち代わり、飲み物のオ−ダ−が続く。
 一段落したところで、私たちも招待客の仲間入りをして飲んでいたが、また急に忙しくなった。午前零時が近づいてきたからだ。新しい年を迎える瞬間、みんなで乾杯するのだ。私たち裏方は、再びてんてこまいの忙しさになった。
 殺到する飲み物の注文を裁いてホッとしていると、この家の主人が自分の腕時計をのぞき込んで、
「そろそろ時間です。さあ、向こうへどうぞ」と私たちを促した。ウイスキ−の入ったグラスを手に、私も応接間の方に移った。
 一方、この家の主人は、ゴ−ゴ−を踊っている客たちを押し分けるようにして、いちもくさんにステレオに向かった。そして、レコ−ド・プレ−ヤ−からラジオに切り替えた。