「メルボルン・カップで」の続きの続き

 友人の“馬の歯医者さん”は、この日の招待客を一通り紹介した後、私のためにウイスキ−を注文してくれた。彼は、私がウイスキ−好きなのを十分承知しているからだ。「注文してくれた」と言っても、ウエイタ−役は彼の牧場で働く牧童だ。私は恐縮して、ウイスキ−を取りに行くこの若者の後を追った。
 彼は車にたどりついたのだが、ここに至って初めて、私が抱いていた「ある疑問」が氷解した。クラブ・ハウスの駐車場に、ウ゛ァン型の車の多い理由が・・・。
 大型のウ゛ァンには、ぎっしりと荷物が積み込まれていた。飲み物や食べ物の入ったダンボ−ル箱、アイス・ボックス、それに椅子もまだ何脚か残っている。
 要するに、このウ゛ァン型車は、パ−ティ−用の用具一式を運ぶための「移動式パ−ティ−車?」なのだ。これだけの荷物を、ふつうの車で運ぶのはとても無理だろう。
 この日、“馬の歯医者さん”は、十数人ものお客を招いていた。
 しばらくして、それまで人けのなかった隣のスペ−スでも、テ−ブルや椅子を持ち出して、パ−ティ−の準備が始まった。
 すでに中庭のあちこちのテ−ブルには、着飾った人々が群がり始めている。これらの光景をカメラで追いかけてから、友人の席に戻った。すると、賑やかになっていた隣のパ−ティ−席から、私に向かって、
「こちらの方へいらっしゃいませんか?日本のことを少し教えてほしいのですが・・・」と、声がかかった。