テレビ・ワ−ク(5)

 

 再び、国営放送局の花形ディレクタ−であるジムの話に戻る。
 スタジオでは、ライト・マンによる照明の仕込みが済んで、テレビ・カメラの調整が始まった。当時のオ−ストラリアのテレビ放送は、カラ−ではなかった。(カラ−になったのは、私が帰国して2年ほど過ぎた1975年の3月からだ)。とにかく、白黒カメラだから、調整にあまり時間はかからない。2階の副調整室にいる技術者とカメラ・マンとが、インタ−・カムを通じて、何やらやり取りをしている。間もなく音声の担当者も加わり、出演者用のテ−ブルに置かれたマイクロホンのテストをする。
 どうやら、準備はすべて整ったようだ。3台のカメラを切り替えるスイッチャ−と記録係(二人とも女性)も、副調整室でスタンバイしている。
 これで、ジムを除けばスタッフ全員がそろったことになる。
 だが、いくら待っても、ジムとこの日の出演者は現れてくれない。