テレビ・ワ−ク(6)

 

 ジムとの約束時間は、とっくに過ぎていた。だが、スタッフは例によってお喋りを楽しんでいて、彼の到着の遅れなど気にする様子はまったくない。副調整室の時計を見ながらイライラしているのは私だけ。いくら時計を見ないようにしても、いつの間にか視線は文字盤にくぎづけになってしまう。たまりかねて、出演者ロビ−へ行くことにした。
 すると、そこにはジムたちがいた。彼は、ド−ランを塗ってもらっている出演者の隣に座って、気ぜわしげに打ち合わせをしている。ほんの少し前に到着した司会役の出演者と、簡単な番組の流れを確かめているようだ。
 私と目が合うと、ジムは、
「悪いけど、上で待っていてくれる?」
 上とは、副調整室を意味する。
 やがて、ジムは出演者を伴って、スタジオにやってきた。
 4人の出演者がセットの椅子に座るのを見届けてから、彼はスタジオ内の階段を副調整室へと一気に駆け上がってきた。いつものスマイルをたたえながら・・・。
 長時間待たされたはずのスタッフも、みんなにこやかな表情で彼を迎えている。