テレビ・ワ−ク(8)

 

 やがて、ジムの「VTRスタ−ト!」の声とともに、本番が始まった。リハ−サルの手順通りにテ−マ音楽が鳴り、司会者の挨拶が続いた。そして、出演者たちがワイワイ話しているうちに?番組は進行し、録画は無事に終わった。
 この瞬間を待ちかねて、私はジムに尋ねた。というのは、収録中の30分間、ふだんの彼からはとても想像できないほど“もの静か”だったからだ。
 彼が口を開いたのは、3台のカメラの切り替えと、開始・終了のテ−マ音楽とタイトル・バックのスタ−ト、そして番組名や出演者の名前を画面にダブらせるよう、それぞれの担当者に指示したときだけ。これ以外、一切声を出すことはなかった。
 ふだんは、「ディレクタ−ではなく、アナウンサ−ではないのか?」と疑うほど、お喋り好きなジムなのだが・・・。
「ジム、本番中は、ずいぶんおとなしいんだね?」
「えっ!どうして?」。ジムは、私に聞き返した。