テレビ・ワ−ク(10)

 

 花形ディレクタ−であるジムのこの言葉は、意外に思えた。
 私は、「ディレクタ−は、番組に関するすべての責任と権力を持っている」と思い込んでいたからだ。「気に入らない画面があれば、当然のごとく注文をつけるもの、いや出来るもの」と誤解していた。
 言いかえれば、番組のディレクタ−といえども、その道の専門家(プロ)であるカメラ・マンに、口出しすることは許されないということなのだろう。
 同じように、「照明の具合が悪い」とライト・マンに文句を言うカメラ・マンもいなければ、「セットのデザインが悪いから、マイクを置く場所が見つからない」と嘆く音声担当者もいない。ひとりひとりが、独立した「プロ」としての自覚と誇りを持ち、尊敬される存在なのだ。
 それぞれの責任を全うしている専門家に対して、門外漢がとやかく言ってはならない?。
 他人の専門領域を尊重するのが、この国の鉄則のようだ・・・。