テレビの周辺(8)

 

 息子のガ−ル・フレンドの一人、アメンダの父親は、メルボルンにある商業テレビ局のスポ−ツ・アナウンサ−だ。
 土・日が休みのこの国にあって、スポ−ツ・アナウンサ−にとっては、逆に書き入れ時である。ところが、運の悪いことに、その土曜日と小学校一年生の末娘・アメンダの誕生日とが重なってしまったのだ。おじいさんとおばあさんを始め、近所の友だちやクラスメ−トなどと祝う誕生パ−ティ−に父親が出席できないのは寂しいに違いない。毎朝、母親に大きなリボンを髪に結んでもらっている甘えん坊のアメンダは、父親に文句を言った。
「ダディ−のいないパ−ティ−なんて、アメンダつまらない・・・」? と言ったかどうかは分からないが、とにかくパ−ティ−を開く時間は夕方に変更された。子どもは夕方の5時までには家に帰らなければならないこの国で、「夕方から始める」というのは異例中の異例とも言える。
 アメンダの家には、すでにおじいさんとおばあさん、それに何人もの友だちがやって来ていた。アメンダは、大きなひとみをいっそう大きく開けて、父親のスポ−ツ放送を食い入るように?見つめている・・・。