のんびり消防車(2)

 

 突然、けたたましい消防自動車のサイレンが聞こえてきた。どんどん近づいてくる。
 赤いランプを点滅させ、耳をつんざくような音を響かせながらかなりのスピ−ドで突進してきた消防車は、なんと私の目の前のフリンダ−ス・ストリ−ト駅のすぐそばに止まった。
 周囲を見渡しても、炎はおろか煙りさえ見えない。
 とにかく私は、急いで消防車に駆け寄った。ポンプ車に続いてホ−ス車やはしご車も次々と到着する。日本なら、消防車が止まると同時に消防隊員が飛び降りてホ−スを繰り出し、直ちに消火活動に取りかかるのだろうが・・・。
 10人ほどの隊員がゆっくりと車を降り、ぺチャクチャ喋りながら駅の入り口付近にバラバラに集まった。次に、それぞれの隊員が赤い襟のついた黒のハ−フ・コ−トのボタンをかけ始める。銀色のボタンが二列にぎっしりとついているので、全部かけ終わるまでにはかなりの時間がかかるはず。だが、彼らの動作は、どうみても「機敏さ」とは縁遠い。