のんびり消防車(3)

 

 隊員たちは、相変わらずお喋りしながら、のんびりとコ−トのボタンをかけている。
 とても、「火事の現場に駆けつけた」とは思えない?。
 やがて、手に取った太いベルト(これには、おのとボルト回し、それに長いロ−プがぶら下がっている)を腰に巻きつけ、白いヘルメットのあごひもをかけて、これでやっと出動準備完了。一般の乗客に混じって、三々五々駅の改札口へと向かったのだが・・・。
 それっきり、彼らは戻ってこない。
 道端に止まっている消防車は、サイレンこそ鳴らしていないものの、赤いランプは点滅を続けている。車に残った隊員たちにもまったく動きが見られず、ホ−ス車とはしご車も止まったままだ。
「いったい、火事はどうなっているのだろう?」
 もちろん、やじ馬は私一人だけではない。何しろ、込み方にかけては「世界でも有数」と言われる場所での“通行量の一番多い時間”の出来事なのだから・・・。