交通ル−ル(1)

  

 
 交差点の青信号は、すでに点滅し始めている。赤に変わるのは間もなくだ。
 こんなとき、お年寄りならともかく、ほとんどの人は脱兎のごとく駆け出して、大急ぎで横断歩道を渡ろうとするのではなかろうか。日本では、よく見かける光景だ。
 だが、メルボルンではかなり事情が違う。青の信号が点滅し始めたら、ほとんどの人は、横断をあきらめて次の信号を待つ。これには、不幸にして事故に遭おうものなら、「歩行者側の責任を問われる」心配? があるからだ。
 これを裏付けるような悲しい出来事が、実際に私の身近で起きた。日本人の知人が横断歩道を渡っている途中で信号が赤に変わり、走ってきた車にはねられてしまったのた。ちょうど車の死角に入っていたのと打ちどころが悪かったために、死亡事故となった。
 この事故に対し、当局は、目撃者の証言などから「この人が事故に遭ったときの信号は赤だった。だから、信号を守らなかった歩行者自身に落ち度がある」と、直ちに判断を下した。つまり、「守るべき規則を守らなかった歩行者の方が悪い」というのだ。