人間教育(1) 

  

 親友の次男は、いかにも末っ子らしく、甘えん坊でわがままな一面がある。長女と長男がとてもいい子だけに、彼は弁護士一家の“問題児”のようにも思えた。
 事実、両親や姉、兄たちも、次男がぐずり出すと「また、彼の病気が始まった。仕方ない」というような態度で彼を見守っていた。
 ところが、春休みに入る直前、彼の父親が、「彼は、間もなくいい子になるだろうよ」と、小さな声で私にささやいた。そのときは、「いったい、何を言おうとしているのか」彼の真意がさっぱり分からなかった。
 やがて、学校は休みに入る。弁護士夫妻は、早速“問題”の次男坊だけを連れて、シドニ−と首都キャンベラへ、一週間の自動車旅行に出発した。
 旅から帰った次男坊は、再び我が家へ顔を出すようになった。
 結論を言うと、彼はすっかり変わってしまった。“問題児”を「卒業」していたのだ。