人間教育(3) 

  

「彼は、ずいぶん変わったね。あなたの言ってたように、すっかり大人びた感じになった」
 この次男が、なぜ“いい子になったか”を解く鍵は、「一週間の自動車旅行」にあるのは言うまでもない。
 根掘り葉掘り尋ねてみると、「この一週間、自分たちと行動を共にさせながら、社会人として身につけなければならない事柄を、その都度一つ一つ教えた」というのだ。
 ホテルで守らなければならないエチケットに始まって、目上の人に接するときの応対の仕方、果ては、音楽会でのマナ−に至るまでだ。身体障害者の施設にも連れて行ったという。
 次男は、自動車旅行に出てから家に帰るまでのまる7日間、「二人の先生」から、起きてから寝るまで、しつけというか、あるいは道徳教育とでもいうべきなのか・・・(ここでは、あえて「人間教育」という言葉を使うが)、とにかく徹底的に鍛え抜かれたことになる。