人間教育(6) 

  

 この旅で初めて出会った親友の弟も、両親と同様に人間的な魅力にあふれる人物だった。
 彼らは、年老いた両親のために、パ−ス市内で最高と言われる病院の一番眺めのよい部屋に、「いつでも入院できるよう」予約しているほど優しい兄弟だ。
 私からみれば、孫の教育は、そういう立派な息子たちに任せておけば十分だと思うのだが、両親と祖父母とでは、当然生活体験に違いがあるはずだ。だから、祖父母からもいろいろと教えてもらえば、子どもたちの学ぶ知識はぐっと広がることになる。
 やはり、あらゆる機会をとらえて、できる限り多くの人々が、いろいろな立場から“人間教育をする”というのが、この国の流儀なのだろう。
 言いかえれば、子どもの両親に限らず、祖父母や叔父叔母、さらには、親の友人や近所のおばさん、果ては公園の手入れをしている人からパンを配達するおじさんに至るまで、それぞれが、子どもたちにとっては、“人間教育をしてくれる先生”なのだ。