人間教育(9) 

  

「うん、それはそうだけど・・・」。彼の鋭い質問に、一瞬たじろぐ。彼は続ける。
「親は、生きている限り、自分の子どものしたことの責任を問われる恐れがあるというわけだ。たとえ、子どもが成人したあとでもね。言いかえれば、子どもを正しく育て上げる責任はその親だけにあって、周囲の人間はまったく関係ないという考え方なんだね。
 ところで、あなたに尋ねるが、“両親だけの力で、子どもを一人前の社会人に育て上げることができる”と、本当に思っているの?」
 このひと言で、彼の言わんとすることのすべてが理解できた。
 この国では、親が子どもの行動に責任を持つのは成人するまでのこと。大人の仲間入りをした我が子がどんな行動を取ろうとも、その責任は本人自身にあるというのだ。
 ただし、一人の子どもが成人するまでは、世の中の大人という大人が、みんなで徹底して人間教育をする。こういう“オ−ストラリア方式”を、私は支持したくなった。