ピック・アップで助け合い(1)

 
 
 私は、夕方のメルボルンのシティ(中心街)を散歩するのが大好きだ。
 東京の騒々しさが体に染みついているのだろう。この国での毎日は、あまりにも静か過ぎて、落ち着けない気分になることがある。馬鹿げた話だが、そんなときには、知らず知らずのうちに「騒音」を求めている自分に気づく。
 メルボルンが、お年寄りと観光客だけの“眠れる都市”から目覚めるのは、サラリ−マンの出勤時とお昼どき、そして帰宅するときの三回だけだと述べたが、中でも夕方は、ひときわ「活気あふれる街」に変身する。
 市電(トラム)も次から次へとやってくるし、信号待ちをする車も多くなる。
 だが、メルボルンが“目覚めている時間”はきわめて短い。ほんの30分か40分で、たちまち元の静けさに戻ってしまう。だから、もたもたしていると、期待する“騒音”に逃げられてしまう。シティでの散歩を楽しめるのは、「ほんのわずかな時間」なのだ・・・。