ピック・アップで助け合い(2)

 
 
 メルボルンの美しさの一つに、「雲」がある。午後から、黒いと言うよりは濃い青みがかった雲が広がったかと思うと、アッという間に大粒の雨が降り出し、ごていねいなことに、豪快な稲妻とカミナリ、さらにはヒョウまで降ってくる。だが、今日は雨は降っていない。ところどころに黒い雲が浮かび、まるで墨絵のような美しさだ。
 目抜き通りにさしかかると、まずビール会社のネオンが目に飛び込んでくる。薄暗くなったせいか、街全体が灯りの中に浮かんで見えるのだ。コリンズ・ストリートとエリザベス・ストリ−トが交差するメルボルン一の繁華街? に近づく。
 オフィスからサラリーマンが洪水のように飛び出して来て、たちまち道を埋める。
 いつもは悠々と歩く彼らの足どりが、なぜか気ぜわしい。家路を急ぐからだろう。ぼんやり歩いていると、人にぶつかってしまう。
「そうだ、この感じだ! やっと、都会らしくなってきたぞ・・・」