ピック・アップで助け合い(3)
「ヘラルド、ファイナル! ヘラルド、ファイナル!」
ジーンズのよく似合う縮れ毛の小学生のテナ−が聞こえてくる。
「ヘラルド新聞(夕刊専門紙)の最終版ですよ!」と呼びかけている新聞売りの少年だ。
反対側の道路からは、「パイパ−! パイパ−!」。こちらの方は、退役軍人のオールド・ボーイのしわがれ声だ(パイパ−とは、新聞のこと)。
市電の走る「ガタン・ゴトン」という音の合間には、メルボルン中央郵便局の時計塔のチャイム。そして、交通警察官の吹く笛の響き・・・。
薄暗くなっただけでなく、雨も近いのだろう。白いヘルメットに旧式? の黒いマントを着た警察官のしなやかに動く白い手袋は、はっきりと見えない。逆に、信号の灯りが、いつもより輝いている・・・。