ピック・アップで助け合い(8)

 

 同じフラットに住むジョンの車だ。運転席の窓を開けながら、彼は
「よかったら、私の車に乗りませんか?」
「ありがとう。でも、どちらへお出かけなんですか?」
 ジョンは、実家に遊びに行っている奥さんと赤ちゃんを迎えに行くというのだが、運悪くこれから私たちが向かう友人の家とは反対の方向だ。
「ありがとう。でも、遠回りになりますから・・・」
「タクシ−を待っていても、なかなか来ないでしょう? それに、お金がもったいないですよ。私がお送りしますから、遠慮なく乗ってください」。
 私たちは、ジョンの好意に甘えることにした。ジョンに限らず、オ−ストラリアの人たちは、こまめに他人の世話をする。これ以降、私もジョンを見習って、同じフラットの住人たちに「私の車にどうぞ」と、ためらうことなく声をかけるようになった。