夜行列車のハプニング(3)

 

 椅子は、日本の列車よりも大きくゆったりしているが、寝台車と違って落ち着けない上、冷房がきつくてなかなか寝つけない。
 眠れない理由は、実はもう一つあった。隣の席にいる中年の女性が気になって仕方がないのだ。と言っても、50歳を過ぎた「おばさん」だ。この旅も、「息子の結婚式に出席するため」と話していた。だから、そんなに“意識させられるご婦人”ではなかったのだが・・・。
 その“元凶”は、彼女が右手に持っている缶ビ−ルにあった。私の左側に腰掛けている彼女は、缶ビ−ルを手にしたたまま、今はスヤスヤと眠っている。
 彼女は、ついさっきまで、車掌の目をかすめては、手提げ袋から缶ビ−ルを一つずつ取り出して飲み続けていた・・・。