夜行列車のハプニング(5)

 

 彼女の英語は、なまりのきつい典型的なオ−ストラリア語だ。その上、酔いが回っているせいか、いっそう聞き取りにくくなっている。
 彼女の勧めを断って、私はシラフを通していた。だから、分かりにくい英語にも忍耐づよく耳を傾けることができたのだろう。
 それにしても、彼女の難解な? 言葉に、夜の遅い時間全神経を集中するのは、この上なく疲れる。
 そのあげく、話の途中でコックリコックリ始めたという訳だ。
 私は、このときほど、人間の体がうまく出来ていることに感心したことはない。
 上体は舟をこいでいるのに、右手に持った缶ビ−ルはあまり動揺しないのだ。
 だが、私の目は彼女の缶ビ−ルに釘付けになっていた・・・。