白豪主義(5)

 

「オ−ストラリア人男性と結婚した彼女の姉はこの国に永住できるが、妹のナンシーさんは別」というのが、前政府の見解だった。
 実は、彼女については、“ドラマティックな事件”が待っていた。
 姉夫婦と一緒にシドニ−に住んでいた当時6歳のナンシーさんは、国外退去を命ぜられ、オ−ストラリアを出国するために空港にやってきた。空港には、彼女の出発を見届けようと、警察官が車の中で待機していた。
 そのとき「事件」が起きた。オ−ストラリアの原住民・アボリジニーの市民権運動の指導者チャールズ・パーキンス氏(現・原住民担当省次官補で、アボリジニー唯一の大学出身者・38歳)が、姉の腕からナンシーさんを奪い取り、彼女が乗せられることになっていた飛行機が離陸するまで“かくまって”やったのだが・・・。当時の政府は“冷酷”だった。