アボリジニ−(10)

 

 伝道団の修道院院長であるセラフィン・サンツ師は、
「いずれ、人口爆発が起こりますよ」と、意外なほど明るい表情で話す。
 というのも、ここに住んでいる原住民200人のうち、16歳以下の若者が80人もいて、出産率が年々上昇しているからだ。
 だが、この地域は、不便なことにかけては「この上ない」ところだ。
 2週間に一度チャーター機が郵便物を運んでくる以外は、伝道団の物資を補給するための船が、年に3〜4回程度来るだけなのだ。
 サンツ師は、その著書の中で、
「原住民は、現在のオーストラリア国民になるべきだし、政治的にも社会的にも平等でなければならないのだが、彼ら自身は、それをあまり期待していない」と記している。