「山本康久氏の証言」から(25)

 

 潜望鏡を「出しっ放しにしたまま」なら、湾内に入れるかもしれないが、入り口付近を警戒している敵の見張りが厳重で、「潜望鏡を下ろさなければならない」としたら、侵入はほとんど不可能だ。
 艦長は、酒巻少尉を呼んで、
「出る(出撃する)かどうか」と、尋ねた。
 すると、彼は、
「自分は出ようと思う」と答えた。
 わたし(山本さん)も、「その方がよかろう」と賛成した。
 これが、「戦争が始まって、何回目かの攻撃」だったら、「再挙を期した方がよい」と思ったに違いない。
 だが、まだ「開戦していない」のだから、「潜望鏡を出したままでも入れるかもしれない」と考えたのだ・・・。