「山本康久氏の証言」から(35)

 
 潜水艦からの魚雷は、距離1・500メートル、方位角60度ぐらいで発射しなければ、なかなか命中しない。
 また、相手の船に「お尻を向けられる」と、不可能になってしまう。
 シドニー周辺は夜光虫が多く、まばゆいほどの光を見せる。
 やっとよい射点に着いて、「いざ魚雷を発射しよう」とすると、夜光虫の明かりで潜水艦が発見され、お尻を向けられてしまう。
 当然、発射できなくなり、また目標の前方へと移動しなければならない。
 これを繰り返しているうちに、商船が緊急通信「S・S・S」を打ち続け、これををシドニー局が受信して応答し始めた・・・。
(普通の救難信号は「SOS」だが、潜水艦に追撃された場合は、「S」を打電することになっていた)。