「山本康久氏の証言」から(47)


 わたし以外の新婚仲間10人は、全員戦死し、わたしの女房だけが「未亡人」にならずに済んだ。
 現在、わたしは妻と離れて、勤め先の出張所の寮で「独身生活」をしている。
 だが、妻は、それほど不満そうな顔は見せない。
「本音」はわからないが、それで も、妻が何か不服そうな表情を見せるときには、
「お前は、いい亭主を持った。地御前で一緒に過ごしていたほかの10人は、みんな戦死してしまった。
 彼らは、1年に一度のお盆に、「お精霊様」として、なすやきゅうりに乗って帰るだけだが、わたしは、年に何回も、「足のある姿」で家に戻るのだから、いいじゃないか」と、我慢してもらっている。
 これまで述べたように、わたしは、あらゆる戦争を経験した。
 幸運というか、どうにか今日まで生き延びて、こうして皆様にお目にかかることができた・・・。