「山本康久氏の証言」から(49)


 実例を申し上げたい。
(イ) 昭和12年の上海事変のとき、「いずれ、日本とアメリカとの間で戦争は起きる」として、両軍の艦隊は、すで
「実弾を積み込む」など、開戦寸前の状態にあった。
 あとは、「大統領の署名を待つだけ」となっていたとき、アメリカの作戦部長が、「今は開戦の時期ではない。数年待ってくれ」と、大統領に進言する。
 これを聞いて、アメリカ大統領は、「開戦を踏みとどまった」という。
 現在ならともかく、当時のアメリカで、世論に反して「戦争をやめる」というのは、大変勇気を必要とする決断だった。
アメリカ・ザ・ファースト」・・・。
 海軍でも工業でも、そのころのアメリカは、「何事にかけても、世界一でなければ、世論が許さないという風潮(国情)」があった・・・。