● 作家の描いた「特殊潜航艇」(12)


「私は、オーストラリア海軍渉外部が用意してくれた高速艇に乗って、A中佐と共に、港内(シドニー港)を巡礼することになった。(中略)
 私は中佐に、伴が魚雷を発射した位置に来たら艇をとめてほしい、と頼んだ。
 しばらくゆくと、艇はエンジンをとめ、大きく揺れながら漂白した。
「バンはこの位置からこの方向に向かって魚雷を発射した」
 と中佐は指さした。
 指の先にはガーデンアイランドの桟橋があった。
 私は中佐に一台のカメラを渡し、いまから伴のために花輪を投下するから、写真をとってほしい、と頼んだ。中佐は応諾してカメラを構えた。」