● 作家の描いた「特殊潜航艇」(13)


「私は花束を手にすると、空を仰いだ。
 空は晴れており、太陽は天心に近く、私の両眼は眩しさのために細くなった。
 ── 伴、来たぞ ──
 と、私は心のなかで告げた。
 私は海面を見た。
 シドニーの海はさほど汚染されているとは思われなかったが、それでも、重油が虹の色に似た多色の縞を流していた。
 強い風が私の鼻先をかすめ、風を媒体として、私は死者と語ろうとしていた。
 ── 伴、しばらくだったな ──」