● 作家の描いた「特殊潜航艇」(21)
「伴はふたたびこの切れ目を通って外洋へ出ることが出来たが、松尾大尉はついに脱出することが出来なかったのである。
艇はさらに北に向った。
右側にサウスヘッドが近づいて来た。
ここをかわれば外洋のタスマン海である。
サウスヘッドの西一キロの地点を通過するとき、中佐はこう説明した。
『マツオの艇は、ここで港外脱出を計るシカゴとすれ違った。
マツオはここでシカゴに向って、トッピードー(魚雷)を発射しようと試みた形跡がある。
しかし魚雷は出なかった。」