● 作家の描いた「特殊潜航艇」(24)


「そして、ふたたび、この湾口を出ることが出来たのは伴艇のみであり、そのときは灯台は消されていた。
 この灯台の灯光は、一種の光明であったに違いないが、それが果たしてどのような種類の光明であったかを説明することは困難である。
 湾内も風が強かったが、湾外のタスマン海は、さらに風が強く波が荒かった。
 大洋であるので、うねりがあった。
 高速艇はうねりを受けて左右に大きく傾いた。
 いつまでも崖をみつめている私に、A中佐は、
「今から、特潜の進入したコースに従って湾内に入ってみる」
と告げた。
 私はうなずいた。」