● 作家の描いた「特殊潜航艇」(32)


「私は考えた。そうしてみると、伴は、三十一年間、こうして、全身を波に洗わせていたのだ。
 私は深い感慨をもって、この壊れた岸壁と、それを洗うシドニー湾の水とをみつめていた。
 陸へ揚がると、中佐は言った。
『先日、旧海軍兵士の会合があった。
 私はそのとき、あるスピーチをしておいた。
 日本の小説家が、シドニー攻撃の話を聞きに来るから、あのときの経験者は名乗り出て、参考になる話をしてやってくれと・・・・・・。
 そうしたら昨日、ラッズという水平長から応答があった。
 多分、彼は今日、君のホテルに電話をすると思う・・・・・・』」