● 作家の描いた「特殊潜航艇」(34)


「『おれはあの晩、クッタブルに寝ていた。
 十二時か一時ごろだと思う。
 ドカーンという爆発音がして、船が沈み始めた。
 おれは、下甲板にいたので、すぐ水びたしになった。
 破孔の近くにいたやつは負傷した奴もいたし、死んだ奴もいる。
 おれは水のなかをハッチの方に歩いて、上甲板に出たが、ここも浸水して来たので、タラップから陸上に出た。
 クッタブルは、最上部構造物を残して海中に沈んだ。
 死んだのは十九人だという話だが、いや、まったく驚いた。
 日本の小型潜水艦の攻撃とわかったのは、二日位後だったな』」