● 作家の描いた「特殊潜航艇」(43)

「松尾艇の方は、あとから切断したものと見えて、切断面はきれいであった。
 私は少し後退して、二つの切断面を眺めた。
 左の中馬艇はジグザグで、右の松尾艇のはスムーズである。
 オーストラリア人らしい見学客が来て、二つの切断面の間に立って、ジグザグになっている方を眺め語り合っていた。
 私は前を向いたまま後退した。
 視野が徐々にひろがリ、丁度、全艇の長さが視野に収まる地点に来た。
 オーストラリア人の家族は切断面の間を通って、手前の方に抜け、ふりかえってなおも艇を眺めながら語り合っていた。」