● 作家の描いた「特殊潜航艇」(46)

「私はさらに後退した。
 二つの部分を並べた艇の後方に戦争記念博物館の建物が見え、やがて丸いドームの屋根が見え始めた。
 ドームの頂上は高く、その上にコバルトブルーの空がかかっていた。
 キャンベラの三月は日本が九月に相当するであろうか。
 初秋といえるのであるが、高原なので秋の訪れが早いようであった。
 空の色は濃く、深く、蒼穹(そうきゅう)という言葉があてはまる無限のひろがりを持つ空の大きさであった。」