● 作家の描いた「特殊潜航艇」(48)

「雲が流れ、巻き雲に似た雲が、半球型のドームの上にかかった。
 白く清潔な雲であった。
 シドニーで死んだ搭乗員たちがそこにいる、と私は考えていた。
 彼らはいま、白雲に化して空を流れている。
白雲に化した彼らは、地上に醜く生き残った私をはるかな上空から眺めおろしている・・・・・・。
 キャンベラの丘の上で、雲を仰ぎながら、私はそう考えていた。
 雲は流れ、ドームの円頂を刷くようにこすって通りすぎると、また別の雲が流れて来て、ドームの円頂にかかった。」