● 作家の描いた「特殊潜航艇」(63)

 

「その点、シドニーでは、艇が引き揚げられ、特潜の攻撃が確認されているので、オーストラリア海軍ならびに市民の驚愕は大変なもので、彼らは畏怖の念をもって、ミゼット・サブマリンの名を記憶しているのである。 (中略)

 三、酒巻と私
  
 真珠湾攻撃があってからしばらくたった頃、酒巻(注:酒巻和男海軍少尉)が米軍に捕らえられているという噂が海軍部内であった。
 酒巻は(中略)私の同期生である。
 私は当時、霞ヶ浦航空隊にいたが、同期生の間でも、この噂はひそかにささやかれた。」