● 作家の描いた「特殊潜航艇」(64)

 
「ある同期生は『酒巻は自決してくれんかな。捕虜を出したら六十八期の恥だ』
 と思いつめた表情で言った。
 その後、三月七日に九軍神の発表があってから、酒巻が捕えられているということは決定的となった。
 酒巻が戦死しておれば、十軍神となっているはずだからである。
 どういうわけか、私は酒巻に同情的であった。
 小型潜航艇で、敵に囲まれたら自決も出来ず、捕えられるのではないか、とひそかに彼に同情していたものである。]