● 作家の描いた「特殊潜航艇」(65)

「酒巻と私は海兵時代同じ分隊にいたことはないが、二人共第二外国語支那語であったので、毎週土曜日には支那語教室で顔を合わせた。
 彼も私と同じく背の低い方なので、私の左隣りが彼であった。
 三年半の間、毎週土曜日には顔を合わせたので、かなり親しくなった。
 酒巻が捕えられたと聞いたとき、私は彼に同情したが、それは私が捕虜となることを認容したものではなかった。
 にもかかわらず、私は彼が捕えられてから一年四カ月後ソロモンの海に漂流して、米軍の収容所に入るという運命に出会った。」