● 作家の描いた「特殊潜航艇」(66)

「捕虜になって、真っ先に頭に来たのは、『ついにおれも酒巻と同じ運命に陥ってしまった。
 どこかで彼と会えるかも知れぬ』ということであった。
 ソロモンの海に落ちてから丁度一年目の昭和十九年四月八日、私はアメリカ本土のウィスコンシン州のキャンプ・マッコイ収容所で、酒巻と再会した。
 彼はスパルタの駅まで私を迎えに来てくれていた。
 私は偽名を使っていたが、酒巻は『六十八期でよく肥えて柔道が強い、ということを聞いたので、てっきり豊田だと思っていた』と語っていた。」