● 作家の描いた「特殊潜航艇」(72)

「同年十一月、Aというデスクが私を呼んで、
「君、捕虜第一号の酒巻と同期だそうだが、一つ当時の様子を取材して来てくれんか。十二月八日の紙面にのせたいんだ」と言った。
 私は承知して、岐阜から岡山行きの急行に乗った。
 まだ復員列車の多い頃で、列車は超満員であった。
 宇野へ着いたら、高松行きの連絡船が出た直後だったので、桟橋の近くの旅館で泊まった。
 当時は米二合を出さなければ泊めてくれなかった。」