●「続・知らざる日豪関係」(17)

 
 〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜


「『元日本人』とは、真珠貝採取の出稼ぎ潜水夫として戦前にブルームへ渡り、第二次大戦勃発と同時に収容所へ入れられ、終戦後は日本へ送還されたのち、ふたたび潜水夫として渡豪した人々である。
 現在はオーストラリアに帰化しており、ブルームにはそういう人が、七、八人ほど住んでいる。
 私がブルームを訪れたのは、そうした採貝移民としてのかれらの生活を取材するためだった。
 いや、そのはずであった。
 ところが、そのうちの二人の老人、ヤスムラとアンザイが、収容所時代の話をはじめたとき、私の興味は最初の取材目的から大きくはずれ、まったくべつの対象へと向って、走り出していた。」