●「続・知らざる日豪関係」(23)

 〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜


「一九七八年のはじめ、オーストラリアン・アボリジニー、いわゆるオーストラリア原住民と、これに関連した日本人移民を調査する目的でオーストラリアへ渡りシドニーに居を構えていた私は、ここで日本人が引き起こしたある事件があまりにも広く知られ、かつ深い痕跡を残していることに驚かされていた。
 それが、『MASS BREAKOUT AT GOWRA』と呼ばれている『カウラ事件』だった。
 私はこの事件の内容を、日本を発つ前に読んだ『カウラ出撃』(森木勝著、今日の話題社刊)という本で、おぼろげながらだが知ってはいた。
 しかし、戦争などまったく知らぬ私には、それは単にこれから渡航する国であるオーストラリアについての予備知識として読んだにすぎなかった。」