●「続・知らざる日豪関係」(30)

 〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜


「元軍人たち、あるいは戦争経験者たちは、われわれの知らぬ『経験』を盾に取って、『戦争とはそういうものなのだ』とやり込めてくるだろう。
 歴史の本で読んだことのある『生キテ虜囚ノ辱(はずかしめ)ヲ受ケズ 死シテ罪禍ノ汚名ヲ残スコト勿レ』という戦陣訓を思い出し、何度も復誦してみた。
 しかし、戦後派の『わが内なる日本人』には、何の感動も呼び起こさない。
 実感が、まったくつかめないのだ。
 カウラ収容所にいた人々は、捕虜だった。
 戦争経験者にいわせれば、捕虜は戦場で『死ねなかった者』だというのだろう。」